俺はエレクトラ・レコードのセールス部門で、アシスタントとして働いていた。

木曜の夜、俺はコーヒーショップで何か軽く食べようと思いながら、サンセット通りを流していた。
ウィスキー・ア・ゴー・ゴーの一角に、何百人というキッズが列を成しているのに気が付いたのはその時だった。
誰が出るのかと看板を見上げると、
“モトリークルー、完売”
とある。

俺は入り口へ向かうと、エレクトラの名刺を見せて強引に入り込んだ。
クラブの中には500人(クラブの最大収容人数)のティーンエイジャーがいて、モトリークルーなるバンドに狂気乱舞していた。

あの連中に求愛する俺は、ハリウッドの笑い者だった。
メタルバンドと契約しようとしている俺を、誰もが笑い続けた。

「何考えてんだ?こんなのラジオじゃかからないぜ。キッスの焼き直しなんてできっこない」
と言う。

だけど俺はモトリークルーを信じていた。
ウィスキーの観客がモトリークルーを信じていたんだから。

才能をスカウトするのに耳は必要ない。

必要なのは目だ。

───────

ニッキーは悪魔的なものに本気でのめり込んでいて、レコードを『Shout With The Devil』というタイトルにしたがった。
これにはレーベルも動揺し、俺も動揺した。
宣伝部がそのタイトルを理由に、アルバムを完全無視するのは目に見えていたからだ。

タイトル変更の件で、俺はある晩、ニッキーと話し合いに行った。

「このアパート、とにかく変なことが起こるの」
(ニッキーと同居していた)リタは言った。

「どういう意味?」
書いたばかりのいくつものペンタグラムと、ニッキーが壁や床に飾ったゴシックな絵を見渡しながら、俺は聞いた。

「キャビネットの扉が開いたり閉まったりして、変な音がしたり、わけもなくアパート中を物が飛び交ったり」

「聞けよ、ニッキー」
俺は言った。

「こんな悪魔じみた黒魔術にうつつを抜かすのは止めなきゃダメだ。強烈なんだよ。適当にやってたら、身を滅ぼすことになるぞ」

でもニッキーは、まったく意に関せずだった。

「なんてことないさ」
彼は言った。

「見た目がクールだってだけで、こんなの意味の無いただのシンボルだ。人をムカつかせたくてやってるだけさ。別に悪魔か何かを崇拝してるわけじゃない」

俺に彼の考えを変えることはできないとわかっていたから、そのまま家を出た。

二晩してまた行ってみると、フォークやナイフが壁や天井に突き刺さっていて、ニッキーとリタは普段よりずっと青い顔をして具合が悪そうだった。

神に誓って言うが俺はこの目で見たんだ。
ナイフが1本とフォークが1本、テーブルから浮き上がって、俺のちょうど頭の上の天井に突き刺さった。
俺はニッキーを見て怒り狂った。

「このまま悪魔と一緒んなって叫び続けてたら、“Shout With The Devil”なんて曲をやってる場合じゃなくなるぞ。おまえが殺されちまう」。

俺は、ニッキーがわざとそういう邪悪なものに足を踏み込んだんだと信じている。
何か自分の力が及ばないくらい危険なものに。
そして、それがマジで彼を傷つけつつあった。

アルバムのタイトルを『Shout At The Devil』に自ら変えることにしたところを見ると、ニッキーも同じことに気付いていたに違いない。

未だにあの出来事は俺が今まで生きてきて目にした最も不可思議なもののひとつとして記憶に残っている。

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